福島からの声 – 長谷川健一さん(飯舘村村民)

福島の今とエネルギーの未来

福島第一原発事故から9年たちました。事故による痛みや苦しみ、事故により失われたもの、事故により負わされたもの、それでも立ち上がろうとする人たち…。 ここでは、元酪農家で飯舘村に帰還した長谷川健一さん、二本松市で有機農業に取り組む菅野正寿さん、浪江町から関西に避難した菅野みずえさん、いったん避難し帰還した福島のお母さんの声をダイジェストでご紹介します。なお、インタビュー(10分程度の映像)は、FoE Japanのウェブサイトにて順次公開予定です。
1. 長谷川健一さん(飯舘村村民) 聞き手:武藤類子さん(三春町在住)
2. 菅野正寿さん(二本松在住、有機農家)
3. 菅野みずえさん(浪江町から関西へ避難) 聞き手:武藤類子さん(三春町在住)
4. 福島在住のお母さん

長谷川健一さん(飯舘村村民) 聞き手:武藤類子さん(三春町在住)


長谷川健一さん:元酪農家。原発事故当時、飯舘村前田地区の区長。同年8月、伊達市伊達東仮設住宅に避難。村民の約半数が申し立てた原発被害糾弾飯舘村民救済申立団の団長を務めた。現在は、飯舘村に帰還し、農地を再生させるため、そばの栽培に携わる。

長谷川さん 結局我々みたいな放射能被災地っていうのは邪魔だから日本では早く無くしたい忘れさせたいっていう考えで進んでいる。まず国のお金によって箱モノをどんどん作って、それを、メディアで全国放送でやるわけだ。それでもう「どんどん復興が進んでいる」っていうことに国はしようとしている。

放射能に対する国の考えはものすごく甘いと思うよ。6号線国道を高校生に掃除はさせるわ、挙句の果てには聖火ランナーって、何考えてるんだって。

武藤類子さん 葛尾村も中学生が走るって言っていた。飯舘も中学生なんでしょ?

長谷川さん 道路脇で、何百万ベクレルって土壌汚染が見つかっているわけ。だから俺は自分の孫には戻ってこなくていいってはっきり言っている。子ども達は戻るつもりはないって言っているしな。

変貌する村の姿

長谷川さん 飯舘村の居住者数は、1,300人くらいでしょう。で、もその数字だけが一人歩きするわけだ。現実は違うのよ。本宅は福島市内、飯館の家はセカンドハウス、そういう家庭が非常に多い。あとは(新しい人の)引き込み。若い人達を、「給食費も授業料も、制服も全部タダだ」と引き込む。幼い子どもを抱えたお母さんたちはみんな大変だから、多少のリスクがあっても飯館に来て子どもを預けて自分たちは仕事に行っちゃう。だから、その1,300人という数字を鵜呑みにしてはダメだよ。

前田地区だと、56戸のなかで23戸、すべて年寄り。若い人はいない。子ども達の元に行くという人が何軒か出てきた。結局は人口がまた減ってしまう。若い人がいないという事は発展はねーわな。つくづく思うよ。

武藤さん 道の駅とかすごいお金かけて作ったけどその後どうなんですか?

長谷川さん 赤字続きで、村が毎年3,000万円ずつ増資しています。赤字の補填ていうとみんなに何やってるんだって言われるから「増資」ということに。にも関わらずまだ後ろにちっちゃい公園作ってるわな。セブンも村営だからね。もう1か所ローソンがあったんだけどね。先月いっぱいで辞めちゃった。お客がいない、あれじゃやっていけない。

原発はすべてのものを奪った

 原発はすべてものを奪った。俺らだって今も山には入れない。家はやっぱり子ども達がいてよ、子ども達と一緒に山に行ってよ、そんで山の物を採ったりよ、いろいろ教えたりそれが当たり前だったから。そんな事何にもできないから。山菜とかもう食えねーからな。

そういう事も含めてすべてのものを原発は奪ったな。そのことに対して国も東電も責任を取ろうとしない。(集団ADRで)最後に東電の弁護士から言われたのは、「避難しないで大量被ばくをしたのは村が悪いんでしょ。村が誘致した企業をなくしたくないために留め置いたんでしょ」だって。それを東電が言うかな。我々も牛がいたとかね、そういう色々な都合によって避難できなかったから、それは自己責任でしょって言ってるわけ。もちろん俺は声張り上げて反発したよ。何言ってんだって。

我々のこんな思いとかそういうのをないがしろにしてな、オリンピック、オリンピックって騒いでるからな。みんな福島が復興したと思ってるんだよ。汚染水、薄めて流せば安全だと、大丈夫ですって言ってるわけだな。そんなに大丈夫なら東京湾に流せって。

武藤さん もう9年になるじゃないですか。事故直後もすごい怒りがあったけど、ますます今になってね、心底腹が立ってくるんですよ。オリンピックが終わったらまた潮が引くようにね、お金も人もいなくなってね。オリンピックの期間だけみんなを高揚させて、いろんなことを忘れさせてね。そしてもうバチっと援助も何も切っていくっていうかね、そういうことなんじゃないかな。

長谷川さんのインタビュー動画はこちら

(「福島の今とエネルギーの未来2020」)

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