2022 〜 2023 年重大ニュース

    福島の今とエネルギーの未来

    2022年

    4月4日 米小型モジュール炉の研究・開発に官民が出資

    政府系金融機関の国際協力銀行(以下、JBIC)はアメリカ合衆国法人NuScale Power(以下、ニュースケール)への出資を発表した。JBICによる出資額は約110百万米ドル。ニュースケールは小型モジュール炉(以下、SMR)を研究・開発する企業。ニュースケールにはIHIと日揮ホールディングスが出資しており、JBICも加わることでニュースケールの研究・開発を日本の官民で支援する異例の体制を整えることになる。日本政府はエネルギー基本計画等で、小型原子炉の研究を進めるとしており、JBICは「本出資はこのような日本政府の政策に基づく」としている。FoE Japanは、「SMRという新たな装いをしていようとも、ライフサイクルにわたる放射能汚染、核廃棄物、事故リスクに加え、テロや戦争のターゲットとなるリスクなどの問題を抱えていることは、従来の原発と何ら変わりはない」とし、JBICに出資の撤回を要請する文書を手渡した。

    ▼ FoE Japan 声明:国際協力銀行によるニュースケール社出資に抗議
    https://foejapan.org/issue/20220406/7398/

    4月13日 汚染水海洋放出決定から1年、環境NGO と住民が共同記者会見

    政府がALPS処理汚染水の海洋放出を決定してから1年。漁業関係者、消費者をはじめ、福島県内外の幅広い市民が海洋放出に反対する中、放出のための手続きが進められている。これに抗議し、福島県の市民らで構成される「これ以上海を汚すな!市民会議」、「原子力資料情報室」、「グリーンピース・ジャパン」およびFoE Japanの4団体は共同で記者会見を開催。「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束したのにもかかわらず、海洋放出を進めていること、処理汚染水には、トリチウム以外にも、ストロンチウム、ヨウ素、セシウム、プルトニウムなど多くの放射性物質が残留しているのにもかかわらず、これらの総量が示されていないことなどを批判した。

    ▼動画:ALPS処理汚染水、海洋放出決定から一年オンライン共同記者会見https://www.youtube.com/live/aG3r1vTBBsc

    7月6日 欧州議会、EUタクソノミーに原発と天然ガスを含めることを承認

    グリーン投資を促進するための「EUタクソノミー」に原発と天然ガスを含めるという欧州委員会の提案が、7月6日、欧州議会本会議で承認された。欧州委提案が正式に発表されたのは2022年1月1日。その後、欧州委の諮問機関「持続可能な金融に関するプラットフォーム」は、「原発を持続可能な経済活動として認知することはできない」とする見解を発表した。しかし、欧州委は2月2日、原発・ガスを含める規則を採択。背景には、ガスや原子力産業からの強い働きかけがあったと指摘されている。その後、議論の場は欧州議会に移った。6月14日には、欧州議会の環境委員会と経済金融委員会の合同会合で、欧州委提案に対する反対決議が採択された。しかし、7月6日の本会議では同決議が否決された。仏ストラスブールの欧州議会本会議場の前では、環境活動家らが、「原発・ガスはグリーンではない」「プーチンに贈り物をするのをやめろ」などと書いたバナーを掲げ抗議した。

    ▼原発とガスを「グリーン投資」に!?批判の声続々https://foejapan.wordpress.com/2022/07/07/taxonomy/

    7月13日東京地裁、東電旧経営陣に13兆円余の支払いを命じる

    経営陣が津波対策を怠ったことで原発事故を防げず、東電に巨額の損害をもたらしたとして、東電の株主が旧経営陣5人を訴えた裁判で、東京地方裁判所は勝俣元会長ら4人に合わせて計13兆3,210億円の支払いを命じる判決を言い渡した。争点になったのは、旧経営陣らが大津波を予見し、対策によって事故を防げたかという点。判決では、国の地震調査研究推進本部が2002年に公表した「長期評価」と、これに基づき最大15.7mの津波の可能性を示した東電子会社の試算を「相応の科学的信頼性がある」とした。その上で、「旧経営陣はいずれも重大な事故が生じる可能性を認識しており、事故が生じないための最低限の津波対策を速やかに実施するよう指示すべき義務があったのに怠った。浸水対策をとっていれば重大な事態を避けられた可能性が十分ある」とした。

    ▼東電株主代表訴訟判決要旨、弁護団声明など
    http://tepcodaihyososho.blog.fc2.com/blog-entry-403.html

    7月22日 規制委、汚染水の海洋放出計画を認可

    原子力規制委員会(以下、規制委)は、福島第一原発の敷地にたまり続けるALPS処理汚染水について、東京電力の海洋放出の実施計画を認可した。規制委は5月中旬に実施計画に関する審査書案を了承。1カ月間、パブリックコメントにかけた。寄せられた意見は1,233件。タンク内のトリチウム以外の放射性物質の総量は示されておらず、東電は64核種(ALPS処理対象62核種およびトリチウムおよび炭素14)について測定した3つのタンク群のみのデータで放射線評価を行っている。FoE Japanからの質問に対して、東電は、残りのタンク群については、「放出前に測定する」としている。

    ▼FoE Japan声明:東電・福島第一原発処理汚染水海洋放出の計画承認に抗議するhttps://foejapan.org/issue/20220722/8675/

    8月24日岸田首相、原発7基再稼働、次世代革新炉開発・建設の検討指示

    岸田首相は、GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、2023年夏以降の原発7基の追加再稼働、次世代革新炉開発・建設などについて、年末までに結論を出すよう検討を指示した。(関連記事p.12)

    12月1日 大手電力のカルテル疑い、公正取引委、課徴金を命じる方針

    電力の販売をめぐり、大手電力会社がカルテルを結んでいた問題で、公正取引委員会が、中国電力と中部電力、九州電力などに総額で1,000億円余りの課徴金を命じる方針であることが明らかになった。課徴金としては過去最高額となる見通し。関西電力が、他電力会社の管内で営業を本格化させ、競争がはじまったことをきっかけに、2018年頃からカルテルが結ばれたとされる。カルテルを主導した関西電力は、公取委の調査開始前にカルテルを自己申告したため、課徴金を免れた。(関連記事p.16)

    12月16日 汚染土再利用の実証事業、所沢と新宿で説明会 批判の声相次ぐ

    環境省は、福島第一原発事故の後、除染で出た放射性物質を含む土1,400万m3を全国の公共事業等で再利用する方針である。その実証事業が、福島県外としては初めて、埼玉県所沢市の環境調査研修所および東京都の新宿御苑で計画されている。16日夜、所沢市環境調査研修所で初めての住民説明会が開催されたが、参加者から疑問や批判の声が相次いだ。説明会は冒頭を除き、非公開で開催された。周辺約1,200世帯に対象が限定され、参加者は56人。掲示板で告知されたという。また、21日には、新宿御苑で同様に住民説明会が行われた。こちらも新宿1、2丁目の住民(約550世帯)に対象が限定され、参加者は28人にとどまった。(関連記事p.30)

    12月22日 GX基本方針案を了承

    政府は22日、GX実行会議を開催し、原発の運転期間を実質延長すること、原発再稼働に関係者の総力を結集すること、次世代革新炉の開発・建設などを含むGX基本方針案を了承した。岸田首相が8月24日に関連省庁に検討を指示してから、わずか4カ月余りで方針を固めたことになる。官邸前では、多くの市民が抗議の声を上げた。GX基本方針案は、1カ月パブリックコメントにかけられたのち、2023年2月10日に閣議決定された。(関連記事p.12)

    12月27日 関西電力による顧客情報不正閲覧が発覚、その後全8社に

    関西電力の小売部門が、送配電部門が管理する新電力の顧客情報を不正に閲覧していた問題が発覚、その後電力ガス取引監視等委員会の調査により東北電力、九州電力、四国電力、中国電力、中部電力、北陸電力、沖縄電力についても同様の不正閲覧もしくはマスキング漏れがあったことが明らかとなった。またその後、経済産業省の再エネ発電事業計画認定に関する情報についても、大手電力10社全てで小売部門による不正閲覧があったことも判明している。2016年の電力小売全面自由化以来、小売部門には多くの新電力が参入したが、送配電事業は大手電力の子会社が独占している。電力システム改革で目指されていた、送配電部門の中立・公平な運営がまったく確保されていなかったということであり、詳細調査や処分が検討されている。(関連記事p.16)

    2023年

    1月18日 東電刑事裁判、旧経営陣に再び無罪

    福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久元会長ら東電の旧経営陣3人の控訴審判決で、東京高裁(細田啓介裁判長)は、一審判決に続いて3人に無罪を言い渡した。「巨大津波の襲来を予測することはできず、事故を回避するために原発の運転を停止するほどの義務があったとはいえない」とした。旧経営陣の責任は今回も問われなかった。旧経営陣の3人は、津波対策を怠ったことにより原発事故を防げず、事故時に入院患者など44人を避難の過程で死亡させたなどとして、検察審査会の議決によって業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴された。細田啓介裁判長は、国の機関が公表した地震の予測「長期評価」の信頼性について、「10mを超える津波が襲来する現実的な可能性を認識させるものだったとはいえない」とした。東電の子会社である東電設計は事故前に「長期評価」をもとに津波の高さの試算を行っていて、最大で15.7mの高さの津波が襲うという結果を示していた。1月24日、東京高裁の判決を不服として、検察官役の指定弁護士が最高裁判所に上告した。

    ▼福島原発刑事訴訟支援団
    https://shien-dan.org/

    1月24日 新宿御苑での汚染土再利用実証事業に反対する会発足

    汚染土再利用の実証事業が計画されている新宿御苑(東京都新宿区)の周辺住民らが、「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」を設立し、24日の夜、発足集会を開いた。世話人の平井玄さんは「多くの住民は反対している。自分のところに心配している母親から電話があった。新宿御苑には子どもたちも、海外からの観光客も訪れる。汚染土を持ち込ませてはならない」と述べた。発足集会では、FoEJapan事務局長の満田夏花が、汚染土再利用の経緯や問題点などについて講演した。(関連記事p.30)

    1月30日 高浜原発4号機で原子炉が自動停止

    関西電力・高浜原子力発電所4号機(福井県)で、原子炉が自動停止した。その後の関電の説明によると、核分裂反応を抑える「制御棒」を動かすための電気系統に異常が起き、制御棒が原子炉内に落下し、停止につながったとみられる。昨年11月25日、関電は設備の健全性評価を行い、問題のないことを確認したと発表したばかりだった。

    2月10日 GX基本方針、推進法、閣議決定

    原発の運転期間の延長、次世代革新炉の開発・建設を含む、原発推進の色濃い「GX基本方針」および20兆円規模のGX債の発行やGX推進機構の設立を含む「GX推進法」が2月10日、閣議決定された。雪まじりの雨が降りしきる中、多くの市民が官邸前に集い、抗議の声をあげた。8日に開催された原子力規制委員会では、委員の一人である石渡明委員が、運転期間の上限に関する規定を原子炉等規制法から削除すること、停止期間を運転期間から除外することなどについて反対する意見を述べ、その日決定されるはずであった運転期間延長を前提とした規制については継続審議となった。しかし、13日の臨時会合で多数決で決められた。GX基本方針はわずか4カ月程度でかためられ、年末年始をはさみ1カ月間パブコメにかけられた。政府の公表によれば3,033件の意見が寄せられた。(関連記事p.12)

    2月28日 原発GX「束ね法案」閣議決定

    2月28日、原発推進の色濃い「束ね法案」(GX脱炭素電源法案)が閣議決定された。束ねられているのは、原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の5つ。原子力基本法に関しては、国の責務として、電気の安定供給の確保、脱炭素社会の実現、エネルギー供給に係る自律性の向上のため、原発を活用することを定める。また、原発立地地域の住民をはじめとする国民の原子力発電に対する信頼を確保し、その理解を得るために必要な取組及び地域振興などを推進する責務を有するともしている。原子炉等規制法については「原則40年、1回に限り、原子力規制委員会が認める場合は20年延長できる」とする規定を削除し、経済産業省が所掌する電気事業法に移し、停止期間を除外できるようにする規定を盛り込む。「電気事業法」に移すことにより、原子力を「利用」する立場の経済産業省が、原発の運転期間に関する決定権限を持つことになる。(関連記事p.15)

    ▼FoE Japan 声明:原発推進「束ね法案」の閣議決定に抗議するhttps://foejapan.org/issue/20230228/11696/

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