2019年度原発重大ニュース

2019年度重大ニュース

帰還困難区域「夜ノ森」「大野」「双葉」3駅周辺解除へ

2020年3月14日の常磐線の開通に先駆け、3月4日以降、帰還困難区域の夜ノ森(富岡町)、大野(大熊町)、双葉(双葉町)の3駅周辺などの避難指示が順次解除される。双葉町での避難解除は初めてで、「帰還困難区域」の解除としても初となる。解除される地域は帰還困難区域のごく一部であり、居住は想定されていない。

朝日新聞の報道によると、解除を決定した時点では、大熊町の一部で空間線量が解除要件(毎時3.8マイクロシーベルト)の値を下回ったか確認できていない状況であったという。政府は最終的には毎時3.8マイクロシーベルトを下回っていることを確認できたとしているが、毎時3.8マイクロシーベルトは、年20ミリシーベルトを国のやり方により換算した値であり、公衆の被ばく限度(年1ミリシーベルト)、放射線管理区域(年5ミリシーベルト)をはるかに上回るレベルとなる。

関連記事「避難指示の解除と帰還

自治体の電力調達の実態が明らかに~目立つ大手電力の「取り戻し」

FoE Japanが事務局を務めるパワーシフト・キャンペーン運営委員会、一橋大学自然資源経済論プロジェクト、朝日新聞社および環境エネルギー政策研究所は、2019年6月~7月にかけ、47都道府県、20政令指定都市および自治体新電力設立など注目すべき市区町村を対象に、本庁舎等の電力調達状況や方針について調査を行った。

調査の結果、47都道府県、20政令指定都市のうち、いったん新電力と契約後、現在は大手電力に戻っている自治体が、67自治体中36自治体と過半数に上ることが分かった。また、原発事故後、一度、新電力に変わったあと、再び大手電力に戻っていたのは、北海道、神奈川、長野、岐阜、静岡、愛知、大阪、福岡など24の道府県。神奈川県では、2013年度は新電力による供給が県施設の9割を占めていたが、2019度は本庁舎を含む全394施設が、東京電力エナジーパートナーに変わった。

一方、自治体新電力を設立する動きも全国に広がっている。例えば山形県のように、自治体新電力をすでに設立している自治体は、ほとんどの場合本庁舎の電力を自治体新電力から随意契約で調達している。

詳しくは「自治体の電力調達の実態が明らかに

汚染水、ALPS小委が報告書策定 海洋放出の利点を強調

東電福島第一原発で増え続けるALPS処理汚染水の取り扱いを議論するため経済産業省のもとに置かれたALPS小委員会は、2020年2月10日、海洋放出と水蒸気放出を「現実的な選択肢」とし、放射性物質監視などの面から「海洋放出の方が確実に実施できる」と強調する報告書をとりまとめた。政府は今後、地元の関係者らの意見を聴くなどして処分方針を決めるとしている。

技術者も多く参加する原子力市民委員会は、より安全で面積あたりの貯水量が多い大型タンクによる長期保留案や、モルタル固化案などを提案していたが、これらについてはほとんど議論されないままだった。

詳しくは「ALPS処理・汚染水の海洋放出

甲状腺がん72%でリンパ節転移、47%で浸潤「長期にわたる検査を」

原発事故当時18歳以下で福島県県民健康調査で甲状腺がんと診断された人の大半の手術を執刀している福島県立医大の鈴木眞一教授が、2月3日、福島市内で開催された国際シンポジウムにおいて講演。2012年から2018年までに手術した180例の甲状腺がんについて、72%でリンパ節への転移が、47%で浸潤が⾒られたとし、経過観察が推奨される「超低リスク症例」は含まれていなかったことを報告した。また、手術した患者のうち6%が再発し、再手術したことも明らかにした。180人の男女比は1:1.7であり(うち2巡目は1:1.4、3巡目は1:0.7)、通常1:7~8で女性が多いとされる甲状腺がん患者の男女比より、男性が多い比率であった。鈴木教授は、「長期にわたる検査が必要」と述べた。

県民健康調査では、231人が甲状腺がんまたは疑いとされ、172人が手術している(2019年10月までの県発表による)。県民健康調査検討委員会では、「甲状腺がんの罹患統計などから推計される有病率に比べて数十倍高い」としているが、一方で「事故の影響は考えづらい」ともしている。

甲状腺がんの多発」参照

聖火リレー・コースの放射能汚染

東京五輪の国内聖火リレー出発地点である福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」周辺で、高い放射線量が観測された。国際環境NGO グリーンピース・ジャパンが10~11月に行った放射能測定で、Jヴィレッジに隣接する楢葉町所有の駐車場と山林の境界部分で、地表毎時71マイクロシーベルト、地表1メートルで1.7マイクロシーベルトが観測された。指摘を受けた環境省が調べたところ、同様の数値が確認された。

その後、福島県が聖火リレーのコースや沿道を測定したところ、最大値は車道で毎時0.46マイクロシーベルト(郡山市)、沿道が0.77マイクロシーベルト(飯舘村)だった。これは公衆の被ばく限度とされる年1ミリシーベルト(毎時0.11マイクロシーベルト、国の換算だと毎時0.23マイクロシーベルト)をはるかに超える値となる。また、測定地点の平均が最も高かったのは飯舘村で、404地点の線量平均は毎時0.25マイクロシーベルト。約半分の場所で毎時0.23マイクロシーベルトを上回っていた。

ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクトによる測定風景

NPO法人市民放射能監視センター「ちくりん舎」および「ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト」が、聖火リレー・コースおよびその周辺69か所で行った調査によると、全調査地点中62%で、毎時0.23マイクロシーベルトを上回った。また、飯舘村内で1か所、2,140,000Bq/m2という極めて高い土壌汚染を示した箇所があった。さらに大熊町で3か所、飯舘村で3か所、川内村で1か所100万Bq/m2を超える高い土壌汚染を示す地点があった。

ちくりん舎の青木一政副理事長は、「聖火リレー・コースは住民が住んでいる場所でもある。福島県は、『(沿道で最大だった飯舘村に)4時間滞在しても0.0033ミリシーベルト程度で問題ない』としているが、住民にとっては年間6.57ミリシーベルトとなり、公衆の被ばく限度の6倍を上回る」と指摘する。

伊方原発3号機、運転差し止めの仮処分決定

四国電力伊方原発から50km圏に住む山口県の島の住民が申し立てていた3号機の運転差し止め仮処分申請で、2020年1月17日、広島高裁(森一岳裁判長)は、地震や火山の噴火によって住民の生命や身体に具体的な危険があるとして、運転を差し止める決定を出した。2019年3月の山口地裁岩国支部決定では「原発の運用期間中に巨大噴火が起きる可能性は小さい」などとして、住民側の訴えを退けていた。

森裁判長は、伊方原発の敷地の近くに活断層がある可能性を否定できないとし、「原発までの距離は2km以内と認められるが、四国電力は十分な調査をせず、原子力規制委員会が問題ないと判断した過程には誤りや欠落があったと言わざるをえない」と指摘。また火山の噴火に対する安全性については、阿蘇山で噴火が起きた場合の火山灰などの影響が過小評価されているという判断を示した。

3号機は定期検査で停止中だが、今後の司法手続きで覆らない限り、定期検査が終了しても運転を再開できない。

伊方原発では、制御棒を誤って引き抜く、作業中にすべての電源を一時喪失して停電し、核燃料プールの冷却が43分停止するなど重大なトラブルが相次いでいることから、四国電力は「当面、異議申し立てを見送る」としたものの、2月19日、決定の取り消しを求める保全異議と、仮処分の執行停止を同高裁に申し立てた。

関連記事>原発の稼働状況〜東日本では「原発ゼロ」続く

東電、日本原電の東海第二原発の再稼働に対する資金支援を決定

2019年10月、東京電力は日本原電の東海第二原子力発電所(茨城県)に資金支援をすると発表した。東電の支援金額は約2,200億円になるとみられている。また、東北電力、中部電力、北陸電力、関西電力も資金支援に参加する見通しで、総額3,500億円となる。東電、東北電は、融資や原電の借り入れに対する債務保証の形で支援するという。

東海第二原発の再稼働に必要な安全対策工事費を原電が用意できないため、電力業界が一丸となって支援に乗り出した構図だ。

しかし、東電は原発事故の賠償・廃炉などの費用を払いきれず、巨額の公的資金や電気料金が注入されている。他社の資金支援を行う立場にはない。

東電の日本原電支援に抗議する人たち

東電は、東海第二原発から電気を買うことにより収益を上げて、賠償などを貫徹すると説明している。しかし、日本原電の置かれている厳しい財政状況、日本原電が保有する他の原発がすべて動かせる見込みがないことを考えれば、東海第二原発からの電気の価格は高くなる。これは実質的には、政府の原子力維持政策のために経済合理性を度外視して日本原電を支援することにほかならない。

詳しくは「東海第二原発に使われる私たちのお金

関電、原発マネー還流事件

2019年9月、高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役森山栄治氏(故人)から、関電の役員ら20人が長年にわたって少なくとも3.2億円相当に及ぶ金品を受け取っていたことが共同通信のスクープで明らかになった。また、関電が森山氏が顧問をつとめる建設会社「吉田開発」に発注した工事121件のうち、91件で概算額などの情報を事前に森山氏に伝えていた。さらに、「吉田開発」は、国の電源立地地域対策交付金を活用した事業を6年間で計12事業、高浜町から受注していた。契約額は11億円にのぼる。さらに、関西電力側が1996年9月に福井県美浜町で着工した原発関連施設の工事を巡り森山氏がゼネコンの熊谷組に受注させるよう当時の関電幹部をどう喝し、関電側が競合相手の大林組を説得、落札を断念させていたことも発覚。

関電が高浜町や福井県など原発立地地域にカネをばらまいてきたことを考えれば、これは、「原発マネー」の還流である。市民団体「関電の原発マネー不正還流を告発する会」は12月13日、関電の役員に対して、会社法の特別背任容疑、収賄容疑を問う告発状を大阪地検特捜部に提出した。全国から募った3,272人が告発人となっている。

東電の旧経営陣3人に無罪判決

2019年9月、東京地方裁判所は、福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で起訴されていた東京電力の旧経営陣3人に無罪判決を言い渡した。勝俣恒久元会長(79)と武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)の3人は、巨大津波への対策を怠り、44人を死亡させたとして、強制的に起訴されていた。未曽有の原子力災害をもたらした東電経営トップの刑事責任は認められなかった。

「全員無罪」に憤る市民たち ©️福島原発刑事訴訟支援団

裁判の争点となったのは海抜10メートルを超える津波の予見可能性であった。被告3人は「大津波は予見できなかった」と主張した。

裁判では、2008年6月、東電の土木グループ津波対策担当が、政府地震調査研究推進本部(推本)の長期評価に基づき最大15.7メートルの津波対策を講ずるべきことを、武藤元副社長に進言していたことが明らかになった。しかし、武藤元副社長は、担当者らに津波評価については土木学会に検討してもらうよう指示し、具体的な対策を先送りにした。裁判では、当時、東電は、中越沖地震に伴い柏崎刈羽原発が停止し、原発の耐震安全性強化に多額の費用を投じなければならず、それが経営を圧迫していたことも明らかにされた。

被告の弁護側は「長期評価には具体的な根拠がない」として推本の評価の信用性を否定。「対策を取っていても事故は防げなかった」と過失を否定していた。

被告側の主張をなぞった形となった判決に対して、検察官役の指定弁護士を務めた石田省三郎弁護士は、「国の原子力行政に忖度した判決だ」と述べた。

「福島原発刑事訴訟支援団」の武藤類子副団長は「最も責任を取るべき人の責任を曖昧にし、二度と同じような事故が起きないように反省し、社会を変えることを阻んだ判決」「たくさんの証拠、証言がありながらこれでも罪が問えないのか」と憤った。

除染土再利用のための省令、先送りに

環境省は、かねてより、福島県内の除染で生じた1,400万m3とされる土壌および廃棄物のうち、 8,000Bq/kg以下のものを「遮蔽および飛散・流出の防止」を行った上で、道路・鉄道・海岸防災林・防潮堤の盛土材や農地の嵩上げ材などで利用できる方針を打ち出していた。これを法的に位置づけるため、環境省は、省令改正案を1月8日から2月7日にかけて一般からの意見公募(パブコメ)を行い、4月1日から施行する予定であった。

省令自体、たいへん曖昧なものであった。たとえば、情報公開にかかる規定や、汚染土の濃度や管理にかかる規定も明確ではなかった。FoE Japanは声明を出し、「このままでは、高濃度の放射性物質を含む除染土が、住民の知らない間に再利用され、ずさんな管理により除染土が拡散してもその責任をだれも負わないということになりかねない」と強く警鐘をならした。

パブコメ期間中、2,854件の意見が寄せられたが、「再生利用は汚染の拡大を引き起こす」「集中管理すべき」「災害による土壌の流出リスクがある」などの反対意見が多かった。また、「説明が不十分」「実証事業により無害であるという根拠がない」などの意見もみられた。

環境省は省令の施行を先延ばしにした。報道では、「異論が相次いだため」とされているが、環境省自身は「地元から農地で栽培できる作物について、食用作物も実証事業に加えてほしいという要望があった」としている。(2020年4月更新)

詳しくは「除染で発生した汚染土を再利用?」 

(「福島の今とエネルギーの未来2020」)

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