2020年-21年重大ニュース

福島の今とエネルギーの未来

2020年〜2021年の原発・エネルギーに関する重大ニュースをピックアップしました。関連記事も合わせてご覧ください。

汚染土、覆土なし、 農地利用実証事業
六ケ所再処理工場、審査合格 事故やトラブルは考慮されず
電力容量市場、再エネ新電力から 見直しを求める声
日立製作所の英ウィルヴァ 原発事業から完全撤退
再エネ、電力供給の 23%に 2030 年目標に並ぶ
「生業訴訟」控訴審で原告勝訴 仙台高裁、国の姿勢を厳しく批判
菅首相、温室効果ガスの排出を 「2050 年に実質ゼロ」
賠償費用と廃炉円滑化負担金の 託送料金への上乗せ始まる
北海道寿都町、神恵内村 核のごみ文献調査受け入れ
処理汚染水、 海洋放出に「反対」55%
日本原電に規制委が異例の立ち入り検査、敦賀原発の資料書き換え問題で
福島「帰還困難区域」 除染なしでも避難指示解除の仕組み導入へ
大阪地裁判決「大飯原発3・4号機設置許可は違法」
事故当時 0 歳、2 歳の女の子甲状腺がんと診断
新潟県検証委・生活分科会報告 「避難の影響は極めて深刻、 回復は難しい」
避難者数3万人もの差

汚染土、覆土なし、 農地利用実証事業 

原発事故後に除染で出た汚染土を農地造成に再生利用する実証試験で、環境省が従来の方針を転換し、汚染土に覆土しないまま作物を植えたり、品種を野菜などに拡大したりする計画をまとめた。非公開の会議で試験内容を検討してきた同省の姿勢を批判する声があがっている。 

環境省は「除去土壌を盛り土に再利用する場合、土砂やコンクリートで50センチ以上の高さで覆えば、通行人や周辺住民の追加被ばくは年10μSv以下に抑えられる」と説明してきた。汚染土を全国の公共事業に再利用する方針に関しては、放射性物質の拡散につながることから反対する声も多い。 

六ケ所再処理工場、審査合格 事故やトラブルは考慮されず 

2020年7月29日、原子力規制委員会が、六ケ所村の使用済み燃料再処理工場の審査書案を了承した。この再処理工場は、全国の原発から集めた使用済み核燃料を切断し、硝酸で溶かしたうえで、プルトニウムとウランを回収する施設。人が近づけないような高レベルの放射性廃液を出す。フル稼働すれば、年7トンのプルトニウムが生じる。しかし、すでにもんじゅは廃炉が決まり、核燃料サイクルは破綻してい る。

再処理工場のアクティブ試験(試運転)では事故やトラブルが続出。中には高レベル廃液が149リットルも漏洩するという事故もあった。また、白金属類がかたまり、廃液やガラスがうまく流下せずに、詰まりが発生し、ガラス固化に失敗している。こうしたプルトニウム問題、 相次ぐトラブルやガラス固化失敗については、 審査では考慮されなかった。 

同年 8 月には、再処理工場の完成時期がさらに遅れることも報じられた。完成時期が延期されるのは、今回で25回目。建設は1993年に開始され、当初は1997年の完成をめざしていた。 

建設費も当初の約7,600億円から2.9兆円に膨張。再処理の総事業費は13兆9,400億円。 各電力会社から「再処理機構」を経由し日本原燃に流れている。

電力容量市場、再エネ新電力から 見直しを求める声 

4年後の発電容量 (kW)を確保するための電力容量市場の制度が2020年に始まり、初めてのオークション結果が公表された。9月14日に公表された容量市場オークション結果は、kWあたり14,137円と非常に高い価格となり、 新電力各社に大きな衝撃を与えた。 

電力容量市場の費用は全ての小売電気事業者や送配電事業者が負担する。そのため、大きな発電容量を持つ大手電力会社に有利で、ほとんど発電所を持たない新電力にとっては不利な設計となっている。さらに、容量市場で回収することが想定されているのは初期投資などの固定費だが、日本の大半の発電所の初期投資費用な どはすでにこれまでの電気代に算入されてお り、容量市場への支払いが電力料金に転嫁されれば、消費者は二重に費用を払うことになる。 こういった状況をめぐり、新電力からも見直しを求める声も上がっている 1。 

このままでは大手電力による寡占がますますすすみ、原発や石炭火力などの大型電源への依存が強まる一方で、再生可能エネルギー導入や省エネが阻害されることが懸念される。

注1 : グリーンピープルズパワーほか「容量市場の見直しと運用のあり方 及び 2020 年度メインオークション結果に関 する要望」https://www.greenpeople.co.jp/wp-content/uploads/2020/10/yoryo-shijo_request.pdf(2020年9月28日)

日立製作所の英ウィルヴァ 原発事業から完全撤退 

2020年9月16日、日立製作所は、英国・ウェー ルズで計画していたウィルヴァ原発事業から撤 退すると発表した。総事業費が膨張し、投資パートナーが見つからず、英国内における原発の発電単価あたりのコストが巨額で、事業リスクが大きいと判断したとみられる。すでに2019年に計画凍結を発表していたが、状況は変わらな かった。 

建設が計画されていたアングルシー島の地元の住民団体PAWB(People Against Wylfa B、ウィルヴァB原発に反対する人々)は、事業 がアングルシー島の豊かな自然や文化を破壊するとして長年粘り強い反対活動を続けてきた。 

PAWBのスポークスパーソンのロブ・イドリース氏は、以下のようにコメントした。「日 立の事業からの完全撤退を歓迎する。原子力はコストもリスクも大きく、放射性廃棄物の処理方法も確立されていない」「この事業に反対し連帯を示してくれた日本の仲間や、福島原発事故により困難に直面している方々に尊敬と感謝 を示したい。もうこれ以上原発事故で苦しむ人を生み出すべきではない」。

さらに 2021年1月には現地事業者で日立の完全子会社であるホライズン・ニュークリア・ パワーが、英国政府に申請していた開発許可 (DCO)についても、申請を取り下げるとし、 他の事業者が事業を引き継ぐことも困難になったとみられる。

再エネ、電力供給の 23%に 2030 年目標に並ぶ 

国際エネルギー機関(IEA)によれば、日本の再エネの割合が、2020年上半期、電力供給の23%にのぼっていることがわかった。朝日新聞が報じた2。政府は 2030 年の電源構成にお ける再エネ比率の目標を22~24%としてい たが、これをすでに達成したことになる。 

現在、エネルギー基本計画の見直しの議論が進められているが、2030年目標における再エネの割合を一層高めることが求められる。

注2: 朝日新聞「再生エネ、国内総発電量の 23% に」(2020 年 9 月 25 日) 

「生業訴訟」控訴審で原告勝訴仙台高裁、国の姿勢を厳しく批判 

福島第一原発事故の被害者である福島県および近隣県の住民約3,600人が国と東電を訴えた、いわゆる「生業訴訟」の控訴審で、仙台高裁は2020年9月30日、国と東電の責任を認める判決を出した。一審判決から賠償総額が約2倍に上積みされ、対象も拡大した。 

原告は、国・東電の責任を追及するとともに、 事故当時の居住地の地域環境(空間線量)を事故前の水準に戻すこと(原状回復)及び損害賠償を求めていた。 

判決では、政府機関が公表した地震予測「長期評価」の信頼性を認定し、これに基づく試算をすれば遅くとも2002年末の時点で敷地を超える津波の到来を予見できたとした。また、国は津波による重大事故の危険性を 2006 年に認識したと指摘。国の姿勢を「不誠実ともいえる 東電の報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり、規制当局に期待される役割を果たさなかった」と厳しく批判。 

一審では事故に対する国の責任が東電の半分 にとどまるとしたのに対し、控訴審では国は東電と同等に損害全体に責任を負うべきと結論付けた。 

菅首相、温室効果ガスの排出を 「2050年に実質ゼロ」 

菅義偉首相は、2020年10月26日の所信表明演説で、「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と宣言した。また、「省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立する。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換する」とした。宣言を受け、同年 12 月に経済産業省は「2050 年カー ボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表。原発については、「可能な限り依存度は低減しつつも、引き続き最大限活用」とし、従来通り再稼働や次世代原発の開発を戦略に盛り込んだ。 

賠償費用と廃炉円滑化負担金の託送料金への上乗せ始まる 

福島第一原発事故の賠償費用と各地の原発の廃炉円滑化負担金の託送料金への上乗せが 2020 年 10 月から始まった。本来、東京電力や他の原子力事業者が負担すべき費用を、事故被害者、将来世代や再エネ電気を選択した人も含めた消費者が負担するという仕組みとなる。 

賠償に関しては、福島第一原発事故前に確保されておくべきであった賠償への備えの不足分の一部として、2.4兆円が、2020年以降託送料金で回収されることになった。年間約600億円程度が、40年間にわたって回収される。また、原発の廃炉費用に関しては、円滑な廃炉を促す環境を整備する観点から、2013年に廃炉に伴って一時的に生じる費用の分割計上を可能とした。この分は小売規制料金により費用回収が認められていたが、2020年以降は託送料金で回収することとなった。 

この制度は、①東京電力の経営陣、株主、債権者の責任が問われず、責任を広く将来にわたって国民負担とするモラルハザード、②原発の事故処理・廃炉費用が莫大であるのにもかかわらず、これが原発の費用として認識されない ⸺など大きな問題点をはらみ、今後に禍根を残すこととなる。 

北海道寿都町、神恵内村 核のごみ文献調査受け入れ 

原子力発電所の使用済み核燃料の再処理の過程で発生する高レベル放射性廃棄物(いわゆる “核のごみ”)の最終処分場をめぐって、2020年10月、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が文献調査を受け入れると発表した。 

政府は、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地選定を進めていたが難航し、ようやく2017年7月、調査対象になる地域をおおまかに示した「科学的特性マップ」を公表した。最終処分場選定までには3段階の調査があり、文献調査は最初の調査にあたる。その後、ボーリング調査などをする「概要調査」、最後に精密調査を行う。文献調査受け入れにより、2町村はそれぞれ2年で最大計20億円の交付金を得る。 

北海道は「北海道における特定放射性廃棄物 に関する条例」(いわゆる “核抜き条例”)を定め、「特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難い」としており、北海道知事もこの条例を踏襲すべきという見解を示している。 

住民らは疑問や不安の声をあげており、町の 交付金依存が高まるのではないかという声もある 3。また、補助金交付により文献調査を受け入れさせる国のやり方を、「金で頬をはたくようなやり方だ」という批判もある。 

「原発はトイレなきマンション」とも揶揄される核のごみの問題。最終処分地の選定には十分な情報公開や地元との十分な議論を経た上での意思決定が欠かせない。また、解決不可能な核のごみをこれ以上増やさないため、国はまず脱原発の方針を決めるべきである。 

注3:NHK 「きれいごとでは… 文献調査受け入れの背景」https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2020/10/1015.html (2020 年 10 月 15 日) 

処理汚染水、 海洋放出に「反対」55% 

福島第一原発でたまり続ける処理汚染水について、朝日新聞が2020年11~12月に実施した世論調査で、「汚染された水から大半の放射性物質を取り除き、国の基準値以下に薄めた処理水を海に流す」ことへの賛否を尋ねたところ、「反対」が55%にのぼった。「賛成」は32%にとどまった4。 

処理汚染水の海洋放出に関しては、漁業者をはじめ、幅広い層の反対がある。福島の県漁連は、「海洋放出には断固反対であり、タンク等による厳重な陸上保管を求める」との意見を表明。隣接する宮城県、茨城県の漁連も放出に反対を表明し、全漁連も「断固として反対」としている。2018年に開催された説明公聴会では、 意見を表明した44人中42人が反対。福島県では59市町村のうち41市町村議会が、海洋放出へ反対もしくは慎重な意見書や決議を可決 した(2020年11月時点)。

政府は当初、2020年夏までには処理汚染水の処分方法を決定するとしていたが、年内までには決定、2021年1月の通常国会開会までには決定、と延期し続け、いまだに見通しが示されていない(2021年2月現在)。

注4:朝日新聞デジタル「福島原発の処理水、海洋へ放出「反対」55% 世論調査」 https://digital.asahi.com/articles/ASP135S0CNDJUZPS001.html (2021 年 1 月 3 日)

日本原電に規制委が異例の立ち入り検査、敦賀原発の資料書き換え問題で 

2020年12月、原子力規制委員会は日本原電本店の立ち入り検査を行なった。審査中の敦賀原発に関するデータで複数の書き換えが見つかったためだ。原発敷地内の地盤や断層に関する文書で、調査会社のデータに基づき日本原電がつくったものだが、80カ所で書き換えが見つかっている。12月の検査では、書き換えの経緯や背景を解明できなかったため、社内調査をやり直すことに原電が合意した。原電は年明けに調査計画を作成し、規制委に示すことになっている。原発の審査段階で発覚した問題を受け、事業者に立ち入り検査をするのは規制委発足後初めてだという 5。 

注5:朝日新聞デジタル「原電、原因調査やり直しへ 敦賀 2 号機資料書き換え問題」 https://digital.asahi.com/articles/ASNDH6QL6NDHULBJ00L.html (2020 年 12 月 15 日) 

福島「帰還困難区域」 除染なしでも避難指示解除の 仕組み導入へ 

政府は、「帰還困難区域」のうち、地元自治体から強い意向があり、住民の日常的な生活がないことを前提に、除染なしで避難指示を解除できる仕組みを導入することを決定した。 

避難指示区域は 2014年以降、次々に解除さ れている。従来政府は、①年間20mSv を下回ることが確実であること、②インフラなどの復旧、③県、市町村、住民との十分な協議を解除の要件としてきたが、これまでの解除のプロセスにおいても住民らとの十分な協議が行われているとは言い難い現状がある。 

今回の変更では、自治体などが、地表をアスファルトで覆う、線量計を貸し出すなどの被ばく対策を実施することを要件にした。また、地元自治体による避難指示解除後の具体的な土地利用計画や要望があり、解除後に人の居住が想定されていないことが前提となる 6。 除染を必要とする従来の解除方式と新方式のどちらを選ぶかは自治体に任されることになっており、飯舘村以外の自治体は除染を前提とした避難指示の解除を求めている 7。 

注6:朝日新聞デジタル「除染なしでも「避難指示」解除可に 政府、地元要望受け」 https://www.asahi.com/articles/ASNDT6JDGNDGULFA008.html(2020年12月 25日)  
注7:NHK 「福島「帰還困難区域」除染なしでも避難指示解除の仕組み導入へ」 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201225/k10012784681000.html(2020年 12月25日) 

大阪地裁判決 「大飯原発3・4号機 設置許可は違法」 

 2020年12月4日、関西電力大飯原発3・4号機をめぐり、福井県や関西の住民が国に対して原子炉設置許可の取り消しを求めた訴訟について、大阪地裁は住民側の訴えを認め、国に設置許可の取り消しを命じる判決を出した。国はこれを不服として控訴した。

裁判では、想定される最大の地震の揺れ「基準地震動」が争点となった。基準地震動は、耐震性を評価する際の前提となる。関電は大飯原発3・4号機の基準地震動を、福島事故前よりも引き上げて856ガル(ガルは加速度の単位)と算定し、原子力規制委員会はこれを了承した。 

原告側は、基準地震動の算定の際に使う数式 は、あくまで海外で起きた 53 の地震データの平均にすぎず、平均からはずれた「ばらつき」が評価されていないことを指摘。原子力規制委員会の審査ガイドにおいても、「ばらつき」は考慮しなければならないと記されている。この「ばらつき」を評価した場合、基準地震動は1,150ガル以上になると主張した。大阪地裁判決は、原告側の主張を認め、地震の算定につい て「看過しがたい過誤、欠落がある」とした。 

原子力規制委員会は、「データの不確かさ」 を考慮して保守性を保つことにより、「ばらつき」は考慮しているとしたが、審査ガイドは、「不確かさ」と「ばらつき」両方を考慮しなければならないとしている。 

原子力規制委員会による審査を問題とし、原発の設置許可を取り消す司法判断は初めてとなる。今後、全国の原発の再稼働に影響を与える可能性がある。 

事故当時 0 歳、2 歳の女の子甲状腺がんと診断 

2021年1月15日に開催された福島県の「県民健康調査」検討委員会で、事故当時0歳および2歳の女の子が甲状腺がんと診断されたことが報告された。検査時の年齢はそれぞれ9歳と11歳8。 

福島県は県民健康調査の一環として、原発事故当時18歳以下だった県民を対象に甲状腺のエコー検査を実施しており、4巡目までの検査で 252人が甲状腺がんないし疑いがあると診断されている。203人が甲状腺手術を受け、202人が甲状腺がんと確定した。 

1巡目における甲状腺がん検査の評価として、検討委員会は「地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などから推計される 有病率に比べて、数十倍高い」などとしているものの、チェルノブイリ原発事故と比して被ばく量が少ない、年齢が比較的高いなどを理由に、事故が原因とは考えづらいとしていた。2 巡目に関しても、「甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」としている。

注8 Our Planet TV 「原発事故時0歳と2歳が甲状腺がん~福島県の健康調査」 http://www.ourplanet-tv.org/ (2021 年 1 月 14 日) 

新潟県検証委・生活分科会報告 「避難の影響は極めて深刻、 回復は難しい」 

新潟県は、原発の安全性や原発事故の影響に関する県独自の検証を行っているが、この一環として、福島第一原発事故が住民の生活にもたらした避難などの影響について検証する生活分科会が報告書を取りまとめ、2021年1月21日、 花角知事に提出した。 

報告書では、避難者の実態を検証したうえで、「長引く避難生活に加え、様々な『喪失』や『分断』 が生じており、震災前の社会生活や人間関係などを取り戻すことは容易ではない」「避難者は、 仕事や生きがい、人間関係の喪失などの点で多くの犠牲を払っている。母子避難をした場合の孤立感や移動に伴う苦痛、心身の不調等もある。 しかし、各世帯はそれぞれ合理的な決断の結果として避難行動をとったのであり、その選択を十分に理解することが必要である」などとしている。また、避難元地域から切り離された「ふるさとの喪失/はく奪」が深刻な被害をもたらしているとも指摘。避難していない場合に関しても、「放射能による健康被害への不安がリス ク対処行動をもたらし、生活の質を低下させている」としている。 

分科会の座長の松井克浩新潟大教授は、報告書の内容を県民が広く共有できるよう、周知に力を入れるよう求めた。 

新潟県では、「福島第一原発の事故原因の検証」、「原発事故が健康と生活に及ぼす影響の検証」、「原発事故が起こった場合の安全な避難方法の検証」の「3つの検証」を進めており、結果を踏まえて、東電柏崎刈羽原発の再稼働についての検討を行うとしている。今後、再稼働の議論が本格化するのに先立ち、再稼働を進めた い知事と、再稼働に慎重な委員たちの間での綱引きが生じている状況がある。

避難者数3万人もの差 

東日本大震災と原発事故による避難者数につ いて、福島県が現在約3万6,000人としているのに対し、県内の各自治体の避難者数を足し合わせると少なくとも6万7,000人超に上り、3万人以上の開きがあることを共同通信が報じた9。福島県が公表した数は、県内の復興公営住宅に入居した人が含まれていないなど、もれがあることが以前より指摘されていた。

注9 共同通信「福島の避難者数に3万人の差 県と市町村の集計ばらばら」(2021年1月30日)

(『福島の今とエネルギーの未来2021』)

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