六ヶ所再処理工場と核燃料サイクル(2022年版)

    福島の今とエネルギーの未来

    青森県六ケ所村 で、1993年から再処理工場の建設が進められている。原発で発生する使用済み核燃料を集め、ウランとプルトニウムを取り出す。事業者は日本原燃だ。

    2020年7月29日、原子力規制委員会が審査書案を了承し、事業許可を出した。

    再処理の過程では、使用済み核燃料を切断し、硝酸で溶かしたうえで、プルトニウムとウランを回収する。この工程で人が近づけないような高レベルの放射性廃液が発生する。

    放射性廃液をガラス原料とまぜ、ガラス固化体にして処理をすることになっているが、ガラス固化体は強い放射線を発し、製造直後の表面温度は 200℃を超える。このため、専用の貯蔵施設で 30 ~ 50 年間冷却し、その後、搬出して 300m 以深の地層中に処分されることになっている。しかし、最終処分地については、候補地すら決まっていない。

    25 回もの竣工延期、高レベル廃液もれ、ガラス固化失敗

    六ケ所再処理工場は 1993 年に建設が開始され、1997 年に完成する予定であったが、25 回も完成が延期されている。当初約 7,600 億円だった建設費は、4 倍以上の 3 兆 1 千億円に膨れあがり、ランニングコストや廃止措置を含めた事業総額は約 14.4 兆円にものぼる1。 2006 ~ 2008 年度にかけて実施された試運 転(アクティブ試験)では事故やトラブルが続出した。中には高レベル廃液が149L(リットル)も漏洩するという事故もあった。また、ガラス固化の過程で白金属類がかたまり、廃液やガラスがうまく流下せずに、詰まりが発生。さらに、攪拌棒がまがって取り出せなくなったり、天井のレンガが落ちたりするなどのトラブルも生じた。結局、ガラス固化には失敗し、現在も高レベル廃液がそのまま残っている危険な状況が続いている。

    トラブル続きの六ヶ所再処理工場

    1993 年4 月日本原燃が建設工事を開始(当初の完成予定時期は1997 年)
    2001 年8 月使用済燃料貯蔵プール漏水
    2006 年3 月アクティブ試験(試運転)開始
    2008 年10 月ガラス溶融炉に白金族が固着
    2008 年12 月ガラス溶融炉の天井のレンガが脱落
    2009 年1 月高レベル廃液約150L が漏えい
    2014 年1 月原燃が規制委に審査を申請
    2015 年8 月落雷で工場の主要建屋の計器が破損
    2016 年10 月「使用済燃料再処理機構」が発足(経済産業省の認可法人)
    2016 年12 月ウラン濃縮工場で虚偽報告が発覚
    2017 年8 月非常用電源がある建屋に雨水流入
    2020 年7 月規制委が新規制基準に「合格」判断
    2020 年8 月原燃が完成時期の延期を発表。25 回目の延期
    2021 年6 月事業費がさらに増え、14 兆円超えに

    大量の放射能を環境中に放出

    再処理工場が稼働すれば、大気中や海洋に大量の放射性物質を放出することとなる。日本原燃が公表している月別放出状況によれば、アクティブ試験中の 2007 年 10 月のトリチウム放出実績は、平均濃度が約 9,000 万 Bq/L であった。これは、原発に適用される告示濃度限度(排出濃度基準)6 万 Bq/L の 1,500 倍だ。

    原発から放出される水に含まれる放射性物質については、原子炉等規制法に基づき、核種ごとに告示濃度限度が設けられている。しかし、これは再処理施設から海洋中に放出される排水には適用されない。原発と同じ濃度規制をかければ、再処理施設が動かせないほど、大量の放射性物質を排出してしまう施設なのだ。

    行先のない使用済み MOX 燃料

    再処理で取り出したウラン、プルトニウムから MOX 燃料(プルトニウムとウランの混合燃料)をつくり、一部の原発で使用する計画となっている。しかし現段階では MOX 燃料は国内でつくれず、フランスに製造委託している。また、MOX 燃料が使える原発は、玄海原発 3 号機など 5 基だけである。プルトニウムの余剰を増やさず、MOX 燃料として使いきるには 16 ~ 18 基必要と言われている。国は MOX 燃料を使うことを奨励するため、受け入れる自治体に交付金を出す制度をはじめる。

    使用済み MOX 燃料を処分することも、現状、国内では不可能だ。また、移動すら難しい。通常の使用済ウラン燃料であっても、乾式貯蔵所に移すためには燃料プールで 15 年間冷却する必要があるが、使用済み MOX 燃料は熱量が高く、移動できる状態の発熱量まで下がるには 100 年以上かかるからだ。

    核燃料サイクルの破綻とプルトニウム

    プルトニウムの余剰を持っていることは、核兵器への転用の可能性があるため、国際社会、とりわけアメリカから厳しい目を向けられる。日本の保有量は約 46 トン。これは中国が軍事用に持っているとされる量の 10 倍以上で、核兵器の数に換算すると数千発分に相当する2。原発推進の前提として進められてきた「核燃料サイクル」はすでに破綻している。高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の失敗が致命的であった。

    「もんじゅ」は、プルトニウムを消費すると同時に、消費した以上のプルトニウムを生み出す「夢の原子炉」とされていた。しかし、相次ぐ事故や不祥事で、稼働可能であった 20 年超の期間中、稼働できたのはわずか 250 日。1995 年にはナトリウム漏れ事故と火災事故が発生し、その後、情報隠蔽も発覚。ようやく試験運転再開にこぎつけたわずか約 3 カ月後の2010 年 8 月、炉内中継装置の落下事故が発生し、ふたたび停止。2016 年12 月に廃炉が決まった。

    この「もんじゅ」には 1 兆円を超す国費が投入された。廃炉には 3,750 億円かかると見積もられている。

    大きな矛盾とリスクをかかえつつ、政府は再処理政策を推進し続けている。そのツケを払うのは私たち国民および将来世代だ。

    (「福島の今とエネルギーの未来 2022」)


    1. 2021 年6 月25 日「再処理等の事業費について」使用済燃料再処理機構
    2. The Asahi Shinbun Globe+ 「日本のプルトニウム大量保有、世界が疑問視している」(2019 年9 月7 日)
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