電力自由化から6年
    ~パワーシフトはどこまで進んだ?

    福島の今とエネルギーの未来

    新電力のシェアは約 20%に

    2016 年 4 月からはじまった電力小売全面自由化から 6 年が経つ。震災・原発事故を受けて決まった電力システム改革の一つのステップであり、市民・消費者にとって大きな変化である。販売電力量でみる新電力のシェア(低圧・高圧全体)は全面自由化前の約 5%から 2021年 9 月時点で 21%以上まで高まっている。一方で 2021 年冬、2022 年冬と続いた「電力市場価格の高騰」は新電力、特に再エネ新電力に深刻な打撃を与え、事業撤退を余儀なくされている事業者もある。

    市民の力(パワー)で電気を変えるパワーシフトの意味と意義

    2015 年度から 2020 年度にかけて行われた「電力システム改革」では、「電力の安定供給の確保」、「電気料金上昇の抑制」、「需要家の選択肢の拡大と事業者へのビジネスチャンスの創出」が主な目的とされた。そのために、従来の大手電力会社の地域独占と垂直統合(発電・送配電・小売をすべて一つの会社が担うこと)を解消していくことが意図された。

    「再エネの選択」も重要な意義の一つで、各地にたくさんの再エネ重視の電力会社が生まれた。自治体が参画する新電力や生協系再エネ電力、民間の地域新電力などである。再エネ新電力各社は、それぞれ電源調達やサービスなどにこだわりや特徴を持ちユニークな取り組みを試行錯誤しているが、規模はまだ圧倒的に小さく宣伝力もないため、一般消費者には情報が届きにくい場合も多い。しかし、地域に根差し市民との関わりを重視する再エネ新電力の存在は、今後の再エネ普及のためにも非常に重要である。これらの新電力が顧客を増やすことで、再エネの調達を増やすことにつながり、こだわりのある再エネの設置にもつながる。

    電力自由化のもとで、消費者が安い電力を求めるようになった結果、電力会社側も厳しい価格競争にさらされている。大規模な原子力や石炭火力、大型水力などの電源の 8 割以上を所有・契約している大手電力が、圧倒的に有利な状況は変わらない。大手新電力も、自社の火力発電を持つか、大手電力から電気を仕入れる契約をしている場合がほとんどである。

    パワーシフト・キャンペーン(p.53 囲み記事参照)で紹介している再エネ新電力

    大規模集中、中央集権的なエネルギー構造から、地域分散型の社会へ移行していくためには、持続可能な再エネを応援する市民の後押しが欠かせない。また、再エネ調達を行う企業や事業所も続々と現れている。環境配慮に関心の高い企業だけでなく、事業理念に沿った調達をしたいという中小企業などが、それぞれの理念で再エネへの切り替えを行っている。例えば老舗食品加工会社、地域に根差した薬局チェーン、子ども服ブランド、製紙会社、大手百貨店、アウトドアブランド、私立学校や宗教施設(お寺や教会)、弁護士会館、ラジオ局、マンション、カフェ、洋菓子店、居酒屋、美容室、市民団体の事務所などがある。大規模な広告はなくとも、そうした事業者や市民の「思い」とともに、持続可能な再エネ選択の輪は確実に広がっている。

    大手電力による市場支配の状況

    原発や石炭火力を支援する制度も次々とスタート

    電力自由化による競争の波にさらされ、原子力や火力発電の事業採算性が悪化することを防ぐため、経産省は改革に逆行して原子力や火力をすべての消費者が支えるしくみをつくった。福島第一原発事故の賠償費用や原発の廃炉費用の一部を託送料金で回収するしくみ(2020 年 10 月から実施)や、容量市場(原発や火力発電の維持費を、すべての小売電気事業者が負担するしくみ、2024 年度から実際の支払い開始)、非化石価値取引などである。これらの仕組みは、大手電力に有利に、再エネ新電力に不利に作用している。これでは、大手電力の寡占も化石燃料依存も変わらない。制度の見直しと再エネ新電力の応援と、両面からの働きかけが必要である。

    FoE Japan の取り組み
    ~パワーシフトを後押し
    原発事故や気候危機を背景に、自然エネルギーを選びたいというニーズは大きくなっています。FoE Japan は、環境団体や消費者団体、脱原発団体などと連携してパワーシフト・キャンペーンを運営し、ボトムアップの再エネ選択を呼びかけています。
    
    
    power-shift.org  – 電気を選べば社会が変わる

    (「福島の今とエネルギーの未来 2022」)

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